夏目漱石著『吾輩は猫である』

image-夏目漱石著『吾輩は猫である』 - JKF池下

ついに『吾輩は猫である』を読み終えた。足かけ2年かかった。キッカケは2021年1月から読み進めた新明解四字熟語辞典第二版だ。

辞書の旅は、序文からすべて読むというルールを課している。だから例文も面倒だが読まなければならない。そして毎日読んでいたら、あることに気がついた。

この辞典の例文は、芥川龍之介や太宰治、森鴎外(おうがい)などの名著から多く引用されているが、中でも夏目漱石の『吾輩は猫である』が最多だったのである。


親切さは時代によって変わる

例文で断片的に『吾輩は猫である』を読み、そのコミカルな内容に興味が湧き、挑戦したくなった。2年間カバンの中に常備して少しずつ読み進めていたので、表紙も無くなりボロボロである。

内容は猫目線で愚かな人間たちの諸行を滑稽に語るというオムニバス。読書中にニヤける場面が何度もあり、湯船に浸かりながら笑ったこともある。

ブラックユーモアを増した『サザエさん』のような印象も受けた。

しかし、改行が少ないので文字は詰め込まれ、読みづらい。また、後書きによると漱石の癖らしいが話の脱線も多い。数ページ読むと眠気が襲ってくる(笑)

ちなみに1話目が意外と簡潔なのは、後輩の高浜虚子が編集したかららしい。

現代の読者に優しい小説ではないが、当時の時代は明治で令和より貧しかったので、1冊の本を噛み締めるように読むことを吉としたのかもしれない。

読みやすいと、すぐに読破してしまい、本を読んでいる間の現実逃避の時間も短くなる。

今のようにTVやPC、スマホなどの延々と続く娯楽での現実逃避はできない。だから当時の読者にとって親切な本とは、「読むのに時間がかかる本」だったのではという仮説を立てている。

ちなみに猫は、酒に酔って甕(かめ)に落ちて溺れる。そして猫はじきに足掻くのを止め、諦め、楽になって死んだ。

PS
2023年12月、辞書の旅の現在は、広辞苑第七版の「か」まで来ている。ここまでの傾向を見ると『源氏物語』の引用が多い。角田光代訳の「上」は読んだので、そろそろ「中」を読んでみようかしらん。

明るく生こまい
佐藤嘉洋