岸正龍著『人生を変える心理スキル99』
著者の実体験をまじえて、アンドロイドの美少女ロイのアドバイスという体で、世界中の心理学者などのテクニックを存分に紹介した本。
著者との直接的な出会いは2007年。
岸正龍氏は、個人的に愛用していた『MonkeyFlip』というメガネブランドの社長である。
2009年4月、私は絶対に負けてはいけない試合で、負けた。
本戦はそこそこ有利に進めた感はあったけれど、勝ちきれずに延長突入。
スタミナ勝負で勝ち抜いてきた私が、スタミナ勝負で負けた。
見返したくない試合
酸欠だった。
本戦3R目の残り1分頃にはすでに身体に異変が起きていて、鉛のようになって動かなくなった。
滅多打ちにされた。
それでも、絶対に勝ちたかったので、鉛のような腕を振り絞ってパンチを放った。
スローモーション。
もうほぼ勝てる威力の技は出せない。
小学生も倒せないんではないかと思われる弱さである。
それでも、絶対に勝ちたかった。
本当に死ぬかと思うくらい辛い3分間だった。
ただただ、精神力のみで立っている状態。
立ち続けたが、醜態を晒す時間が長くなるだけだった。
勝った試合も負けた試合も、自分の人生の宝である。
しかしこの試合は、数ある中で見ていて最も辛く、見返したくない試合である。
だから佐藤はスターになれないんだ。
やっぱり魔裟斗じゃないとダメだ。
世間から心底ガッカリされた試合でもある。
試合後の酷評はなかなか凄まじいものがあった。
岸さんからの電話
この試合前には、『MonkeyFlip』で佐藤嘉洋とのコラボメガネを出す計画があった。
佐藤が地上波にバンバン出て、期待も露出も多い状態でやるからこそ、ビジネスとしてはやる意味があるというもの。
ドラゴ戦でとんだ醜態を世間に晒してしまい、佐藤の評価は地の底へ。
TV局の人たちもガッカリしてもうTVには映してくれないかもしれない。
福岡の宿泊先で一睡もできずに夜を明かし、朝食会場でも人目につかないようにいそいそと隅っこでコーヒーだけ飲み、同じころ食べに来ていた魔裟斗さんとは恥ずかしくて目も合わせられず。
周りにいる人全員が、私を嘲笑しているような気持ちだった。
部屋に戻ったころ、電話が鳴った。
『MonkeyFlip』の岸社長だ。
呼び出し音が鳴ってもすぐに出られなかった。
コラボメガネの延期という名の中止、だと思ったからだ。
「昨日はすみませんでした」
私は開口一番に言った。
「いえ、最後まで勝とうとした姿勢は十二分に伝わりましたよ。ところで嘉洋さん、コラボメガネの件ですが……」
来た……
「やりましょう! いえ、やらせてください! こんなときだからこそ、やる意味があるんですよ。やりましょう!」
私はもう言葉にならなかった。
電話を切ったあと、ホテルの部屋で一人、合掌した。
そして振り絞るように声に出して言ったのである。
本当に、ありがとうございます……
このときの気持ちを思い出すと、今でも目頭が熱くなります。
そしてこの年、なんと『MonkeyFlip』にはスポンサーにもついていただき、なんとなんとコラボメガネは『MonkeyFlip』史上でも記録に残るくらいのバカ売れ。
ホテルをチェックアウトしたあと、名古屋から来てくれた友人と福岡の柳川の川下りをした。
当時のブログにも写真が残っていた。
私は昔も今も、人に恵まれております。
ありがたいです。
有難いです。
有難い…元は「めったに無い」の意。
かけがえのない経験をして、身の幸せをしみじみと感じる様子だ。新明解国語辞典第7版
#辞書の旅
自然と出るまで勉強だ
著書にある心理スキルは、この本のまま小手先のテクニックとして使うと、やはりすぐにバレる。
人間性はおのずと自然に出てくる。
著書にもあるが、悪用すると人間関係は破綻してしまいかねない。
だからこそ、こういった心理テクニックは、自然と出てくるまで勉強を続けなくてはならない。
何度も読み込むか、いろいろな書籍にも目を通すか。
人間というのは怠惰なものである。
自分で自分を律し、自分との約束を交わし、そして守り、努力・工夫・勉強を積み重ねた結果として、日常生活の言動や態度に出るようにしたい。
そして自分に起きた、良いこと悪いことに感じたすべての経験を大切に抱きしめて、成長につなげよう。
それが充実した人生を送る秘訣なのではないだろうか。
多かれ少なかれ、
もう人生終わりだ
という経験は、誰にでも訪れることでしょう。
そこで挫けて何も学べずに嘆いているだけか、
いい勉強をした
と何か一つでも学ぶことを見つけて泣きながらでも立ち上がるか。
私は死ぬまで、後者でありたい。
きっとどこかで誰かが見守っていてくれるから。
少なくとも自分自身は自分のことを一番近くで見ている。
戦友ドラゴと再戦
惨敗した1年後、戦友ドラゴと再戦しました。
魂込めて戦いました。
明るく生こまい
佐藤嘉洋